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2015年9月22日 23:21

3. 「陰」と「陽」って、意外とややこしい

2)陰陽

漢方診療をするうえで大切なものさしの二つ目に「陰と陽」があります。陰と陽とは、自然界の「朝と夜」のようなもので、人間の体にも同じような事象が存在していると考えます。

 

「陰」とは、手足が寒々、精神的な抑うつなど「物静かで、活力の低下した様子」のことをいいます。一方「陽」とは、ほてりや発熱、気分高揚など「激しく、活力の増している様子」のことをいいます。

 治療は、陰の冷えた証には、人参(にんじん)、乾姜(かんきょう)、附子(ぶし)のような温める生薬を、また陽の熱い証には、黄連(おうれん)、石膏(せっこう)、大黄(だいおう)のような冷ます生薬をもちいます。つまり陰と陽の二つをきちんと見分けてお薬を選びます

 

さてこう述べるといかにも簡単そうですが、診察の中で患者さんの体質を伺うとなると、これが意外とややこしいのです。その理由をいくつかあげてみましょう。

 

1)陰証は潜在的で分かりにくい

陽証は激しく目立つため、わかりやすいことが特徴です。しかし陰証はきわめて潜在的といえ、状態が軽く見えてしまいます。患者さんといつも通り話をしていると、見逃してしまうくらいです。

これらの治療は反対を向いているため、判断を誤ると病気を長引かせてしまったり、悪くさせてしまうことがあります。

熱の出ない寒さだけの風邪や、病態が急変する前の何気ない様子など、きちんと気が付いてあげないといけないこともあります。

 

2陰と陽が混ざっている

陰と陽はどちらか一方だけと、いつもはっきりしているわけではありません。実際は「陰の冷えた部分が3割:陽の暖かい部分が7割」とか「陰が6割:残りが陽」、「陰の中に陽が散在」など状態はさまざまです。これを漢方では、陰陽錯雑の証(いんようさくざつのしょう)といいます。人間の体は複雑で、やっぱり生物なので、あいまいに混在することが普通なのでしょう。

そんな場合の治療は、たとえば附子潟心湯(ぶししゃしんとう)や大黄甘草附子湯(だいおうかんぞうぶしとう)のように、陰と陽があらかじめ配慮されたお薬で様子をみたり、一つのお薬の中でも、温薬の量を増やしたり、寒薬を減らしたり、バランスをみながら調節します。しかしこうなるとエキス剤では難しいため、煎じ(せんじ)薬で対応します。

 

3)陰証がきわまって、陽証のようにみえる

冷えた陰証のはずなのに、そうみえない‥本当にそんな状態があります。つまり陰証に強くかたよると、陽証のようになることがあります。たとえば「冷え症なのに、足が熱い」などです。それを「真寒仮熱(しんかんかねつ)」といいます。これは本質的には陰証のため、体の奥底は冷えているのに、体の別の部分では熱を発している(ようにみえる)というものです。もちろんその逆のこともあり、それを「真熱仮寒(しんねつかかん)」といいます。

このような状態に気が付いたら、治療は中心の証から対応します。

 

4)陰と陽は、一定ではない

陰と陽は決して一定のものではなく、変化することがあります。たとえば、もともと元気な陽証の体質であった方が、手術や強いお薬、長患いなどの結果、陰証の体質に変わってしまうことなどです。

また明らかな出来事がなくても、加齢や心のあり方(精神状態やストレス)、過労、悪い生活習慣、季節の変動などが関係して、いつの間にか証が変わっていることもあります。そのため「この方は、こんな人(体質)だから」と割り切っていると、すべての判断を誤ってしまうことがあります。やはりその時々の証を見て、熟慮する必要があります。

 

風邪や腰痛などの患者さんを前にしたとき西洋医学では、総合感冒薬、痛み止め、湿布などが処方されます。でもそれらはすべて体を冷やすお薬ですから、東洋医学では対応が異なります。

漢方では時間の限られた診療の中で、"変幻自在な陰陽の様子など"、いろいろなことに思いをめぐらせているのです。

 

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