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2015年8月11日 00:28

2. 「実」と「虚」の証ってなんだ

漢方では体の様子をうかがう時に、あるものさしをもちいます。それを「証(しょう)」といいます。古い時代には「症」と書かれていたこともありますが、今は「証」ということばで統一されています。

証とは (1)虚実、(2)陰陽、(3)表裏、(4)寒熱、(5)気血水などの指標で表現され、体質や病気の状態を理解するための目安です。

 

(1)  虚実

体の元気の度合いを示します。体格がよくて元気のある様子を「実証(じっしょう)」、やせて元気のない様子を「虚証(きょしょう)」といいます。

患者さんから「私のような体重の多い人は、やっぱり実証ですか?」と聞かれたことがありますが、残念ながら見た目の体格だけで判断できるようなものではありません。

 

たとえば関取やレスラーのような体の大きな方でも、疲れていたり、悩みをかかえていると、病気になりやすくなります。このような抵抗力や免疫力がおちている状態は「虚証」と考えます。

一方とても線の細い小さな方でも、社会の中で気を張らせ、突進するように頑張っている方は、「実証」です。つまり見た目は実証でも中身が虚証であったり、その逆であったりする場合があります。またその間の状態を「虚実間証 / 中間証」といいます。漢方では、これらを慎重に判断しています。

 

"証をわきまえない治療"といえば、以前このようなことを経験しました。大学病院に勤務していたときのことです。

心臓の血管が細くなっていた高齢の男性がいました。その場合(西洋医学的な)治療の正道は心臓カテーテルとなりますが、その方に行うことについては嫌な予感がしていました。毎日病棟で男性と顔をあわせていて、"まるでオーラが足りない" そんな元気のなさを感じていたのです。それは採血検査などではわからないバクゼンとした感覚でした。

大学病院の病棟での治療方針は、多くの医師が集まって行うカンファレンスによって決まります。医師の間でも上下関係があり、主治医といっても一人のあいまいな意見は通りません。後日、当然のように心臓カテーテル治療が行われました。

その結果治療はうまくいったのですが、男性は体調をこわしてしまい、本末転倒でした。そのとき私は「ああ、やっぱりそうか」と思いました。虚証化しているような方に、積極的な働きかけがあわなかったのです。しかし後の祭りです。その後調子を立て直すのに一苦労をしたことを覚えています。

 

西洋医学は「この病気にはこれ」と一辺倒に考える傾向があります。うまくいくときはよいのですが、「体力のない方(虚証)には、強い(実証向きの)治療があわないかもしれない」という配慮が欠けているのです。テレビでも、視ている側にはいろいろな体質の方がいるのに、「これにはこれ」と点と点を結びつける医療を紹介しています。その結果、思わぬ結果を招いたり、副作用や合併症が引きおこされたりしています。

漢方では、実証と虚証を区別し、まったく異なるお薬を用意しています。これは西洋医学にはありません。現代医学にも、証を大切にする東洋医学の考え方が必要と感じることもしばしばです。

 

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